Projects · アートフェア
All Things Are Delicately Interconnected
Tokyo Gendai 2024「Tsubomi」セクション
- 会期
- 2024年7月4日 – 7日
- 会場
- パシフィコ横浜
- キュレーション
- 天田万里奈(SPECTRUM 共同創設者)
イ・スジョン(韓国国立現代美術館 キュレーター)
当展示では、世代、国籍、文化的背景が異なる4人の女性アーティストの作品を展示しています。“ALL THINGS ARE DELICATELY INTERCONNECTED.(すべては繊細なつながりを持っている。)” 世界的規模のパンデミックの最中にジェニー・ホルツァーは「自明の理」シリーズからこの言葉を再び放ちました。この展示では、分断化する世界状況の下、異なる物事につながりを見出す事で生まれる創造性や可能性を提示します。
各アーティストはそれぞれ独自の表現方法を用いていますが、作品の間には共通のテーマや態度が見られます。ジェニー・ホルツァーは、ミニマルでありながらインパクトのあるLED作品で、簡潔な言葉の力を示しています。ホルツァーの声が機械を通して社会に対して発信される一方で、田島美加は人工的な環境音を抽象的なジャカード織りへと変容させていますが、両者ともアートを通して現代社会の在り方に対して問題提起をしています。田島と、自然の移ろいを描写するミヤ・アンドウの共通点は、テクノロジーもしくは伝統的な技術を使って自然と文明の関係性を考察しながら制作しているところにあります。また日本と米国カリフォルニアの多文化的背景を持つアンドウのユニークな視点は、世界各国でアーティスト・レジデンシーを経験し、アジア人女性として日本に定住した若手タイ人アーティスト、サリーナ・サッタポンが社会を見る眼差しにも通じます。あらゆる表現手段を試すことをためらわないサッタポンは、ホルツァーがさまざまな公共の場で行ってきたように、社会に向けてメッセージを届けます。地球上のすべての生き物と同じように、アーティストたちも、意識しているかどうかにかかわらず、互いに影響を与え合います。彼女たちの表現活動は相互に繊細につながり、冷静でありながら、挑戦的な態度を失わず、現状を新しい視点で捉え、私たちを取り巻く社会や環境とより深く関わるよう促します。
(文:天田万里奈 & イ・スジョン)
当展示は、キュレーターやアートの専門家たちによってなる多国籍コレクティブSPECTRUMによって、企画・運営されています。社会を構成する一人一人が、アートを通して、多様なナラティブや多様な人生の在り方に触れる機会を増やしていく事をミッションとし、これまで実力に見合った評価を得られなかったアーティストをサポートすることに重心を置き活動しています。
アーティスト
ジェニー・ホルツァー
SCAI THE BATHHOUSE
10.2 × 12.4 × 3.8 cm
青と赤(紫)のダイオードによるミニLEDサイン © Jenny Holzer, Courtesy of SCAI THE BATHHOUSE
10.2 × 13 × 4 cm
電子ミニLEDサイン(110Vアダプター)、アルマイト加工アルミニウム筐体、赤・緑・黄のダイオード © Jenny Holzer, Courtesy of SCAI THE BATHHOUSE
作品についてのお問い合わせ上記作品については、東京現代会期中、SCAI THE BATHHOUSE(ブース C07)にお問い合わせください。
東京現代2024のつぼみセクションでは、ジェニー・ホルツァーの作品からスペクトラムによる企画展「ALL THINGS ARE DELICATELY INTERCONNECTED」を始めます。彼女のアーティスト個人としての業績だけでなく、現代アートに対する先見的な美学に敬意を示し、考えを深めるためです。40年以上にわたる彼女の芸術活動は、若い世代を含む多くのアーティストや鑑賞者にインスピレーションを与えてきました。
ジェニー・ホルツァーは1970年代に《Truism》シリーズを開始し、そのシリーズは社会の変化に対応しながら発展してきました。社会や政治に対する彼女の芸術的メッセージは、私たちの従来の考え方を揺るがしました。彼女のテキストは、鑑賞者を既存の枠組みから解放するように考案されており、アーティストや著者を意図的に隠し、鑑賞者により深く考えることを促します。
《Purple Truism-Survival》(2006年)は、青と赤のダイオードを備えた電子ミニLEDスクリーンで構成され、《Truisms》と《Survival》の中から作家が選んだ言葉が現れます。《Truisms 6》(1994年)は、赤、緑、黄色のダイオードを備えたミニLEDサイネージです。これらの作品は、都市の一般的な商業サイネージの形をしていますが、俳人が残してきた俳句のように私たちに短いながらも力強いメッセージを伝えています。
文: イ・スジョン
田島美加
TARO NASU
作品についてのお問い合わせこの作品については、東京現代会期中(2024年7月4日 – 7日)、TARO NASU(ブース B10)にお問い合わせください。
田島美加は、テクノロジーや産業の社会的、政治的背景を調査し、これらの力が人間に与える影響について考えを巡らせながら制作します。制作手法にもテクノロジーを駆使し、絵画、彫刻、映像、パフォーマンスなど多岐にわたるメディウムを用いて表現しています。
「ALL THINGS ARE DELICATELY INTERCONNECTED」展では、田島の近年の代表作とも言える〈Negative Entropy〉から《Inscape Holding Breath Meditation》を展示します。
〈Negative Entropy〉は、繊維工場やデータセンターなどさまざまな現場で録音された機械作業音等をデジタルデータに変換し、そのデータを構図に用いてジャカード織へと変容させたシリーズです。録音された作業音等はそれぞれの現場でフィールド録音され、言語オーディオソフトによってデジタル・スペクトログラム画像に変換されます。その後波形に色が割り当てられ、織物技術者によってパターンに変換され、ジャカード織が作られます。
ジャカード織機は初期コンピュータのパンチカードによるプログラミング機構(バイナリ・コード)の着想となったことでも知られています。これらの作品は、工業生産のポートレイトでもあり、物質的な記録でもあるのです。
シリーズのタイトル〈Negative Entropy〉は、量子物理学で使用される「エントロピー」という用語の逆転を示しています。「エントロピー」とはシステム内の無秩序な状態の度合いを測る言葉です。それを否定すること、言い換えればシステム内の秩序を維持することを表しています。
ミヤ・アンドウ
Sundaram Tagore Gallery
染料、インク、微粒子純銀、樹脂、ウレタン、アルミニウム複合板
127 × 127 cm © Miya Ando
染料、インク、微粒子純銀、樹脂、ウレタン、アルミニウム複合板
127 × 127 cm © Miya Ando
染料、インク、微粒子純銀、樹脂、ウレタン、アルミニウム複合板
127 × 127 cm © Miya Ando
作品についてのお問い合わせ上記作品については、東京現代会期中、Sundaram Tagore Gallery(ブース B11)にお問い合わせください。
ミヤ・アンドウの絵画は、雲の崇高(sublime)な性質から生まれ、時間と空間の儚い瞬間を捉えています。雲を観察した正確な時間と場所をタイトルに付けた作品は、雰囲気があり表現力豊かです。それらは光の質と鑑賞者の位置に応じて、絵画の色と彩度が微妙に変化します。
「夕暮れ(cloud)」シリーズは、素材の探求、文化的および歴史的な参照、自然に対する深い尊敬の念など、アンドウの芸術活動の重要な要素を体現しています。アンドウは、水彩画のような技法と印刷技法を使用して、ウレタンと混ぜたインクと顔料の半透明のウォッシュを金属キャンバスに重ねました。いくつかの作品では、色彩を操作して絵画に深みを与えるために、最大20層の薄い層を塗りました。そして一部の領域をむき出しのままにして、落ち着いた色の通路の中で金属表面が光を反射および屈折させ、動きの感覚を表現しています。
ミヤ・アンドウは、日本とタイを行き来するサリーナのように、日本とアメリカに文化的背景を持っており、文化間のつながりを見出すことによって、事象に対するより豊かな意味と美を表現している作家です。彼女の絵画は私たちの人生の瞬間を捉えていますが、彼女の「瞬間」への関心は私たちを虚栄心へと導くのではなく、日本の美学のように人生の美しさに焦点を当てるように導きます。
文: イ・スジョン
サリーナ・サッタポン
SAC Gallery
作品についてのお問い合わせ作品については、東京現代会期中(2024年7月4日 – 7日)、SAC Gallery(ブース H24)にお問い合わせください。
サリーナ・サッタポンは、パフォーマンス、インスタレーション、写真など、多様な表現方法を用いて、社会問題に取り組む作品を制作しています。さまざまなテーマを探求する彼女の作品は、タイの少数民族出身である個人的背景や、様々な国に住んでいた経験などからインスピレーションを得て、階級間の格差や、社会構造によってうまれる孤立といったテーマに焦点を当てています。また、ある文脈から別の文脈への翻訳、文化の対立現象、セクシュアリティに関する作品も発表しています。
創作活動の中で、サッタポンは芸術作品の非永久性や、芸術の制作と発表で消費され廃棄される大量の資源について真摯に考察しており、廃棄物ゼロをテーマとしたパフォーマンスやプロジェクトにも取り組んでいます。サッタポンのパフォーマンスは、観客の中に紛れ込んだり、観客参加型のものが多く、観客に特定の体験を与え、パフォーマンスの痕跡を記憶に残すことを試みています。
東京現代の特別展「ALL THINGS ARE DELICATELY INTERCONNECTED」で展示する《Balen (ciaga) I belong》は、カラフルなプラスチックの買い物袋を用いたパフォーマンスと、それに基づいて彼女が描いたドローイングのシリーズです。99セントで販売されているIKEAのプラスチックバッグに驚くほど似た2000ドルのトートバッグをデザインしてスキャンダルを起こした高級ブランド、バレンシアガの名前をパロディにしたこのパフォーマンスでは、色鮮やかで目立つけれど安価な使い捨てのバッグを、公共の場、時には高級品に関連する場所で数多く広げたり、パフォーマーの体に巻き付けて練り歩いたりすることで、階級層間の格差や互いに対する不可視性について問題提起しています。
協力
SCAI THE BATHHOUSE, TARO NASU, Sundaram Tagore Gallery, SAC Gallery, Erika Yamao (Scenography), LINENART (Installation), Jun’ichiro Ishii (Exhibition Operation), Julie Politi (Web/Graphic Design), Kaoru Mori (Editing), marutto Inc.